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なぜ“力を抜く”のが難しいのか? ― がんばる人ほど身体がかたくなる理由

  • 執筆者の写真: タナカユウジ
    タナカユウジ
  • 6月12日
  • 読了時間: 7分

更新日:6月13日

「もっと力を抜いてくださいね」

整体やリラクゼーション、運動指導などで、こんなふうに言われたことがある方も多いかもしれません。

でも実際は、そう言われるとかえって身体に力が入ってしまう

自分では「抜いてるつもり」なのに、「まだ力が入ってますよ」と言われて戸惑う。

そんな経験、ありませんか?


私はこれまで、たくさんの方の身体に触れてきましたが、真面目でがんばり屋の方ほど、全身が緊張しやすい傾向があります。

たとえば、仕事も家事も手を抜けない人。

人に迷惑をかけまいと、自分を後回しにしがちな人。

周囲の期待に応えようと、いつも無意識に“戦闘モード”になっている人。

こうした方々の身体には、どこか「抜けるはずの力が抜けずに残っている」ような、独特の硬さがあるのです。


そこで今回のテーマは、なぜ“力を抜く”のがこんなに難しいのか?そして、なぜ“がんばる人”ほど身体がかたくなるのか?

という、とてもシンプルで、とても奥深い問いです。

整体や心身のケアの現場で見えてくる“身体の声”に耳をすませながら、じっくりと一緒に探っていきたいと思います。


「がんばる」と「力む」は紙一重? 〜身体の緊張が生まれる背景〜


真面目で責任感の強い方ほど、「力を抜く」という感覚がわかりにくいことがあります。

実際、施術中に「もう少し力を抜いてみましょう」とお伝えすると、「えっ、これでも抜いてるつもりなんですが…」と驚かれることもしばしば。

それもそのはず。多くの方が、ふだんから無意識に“力を入れている”状態に慣れてしまっているのです。


たとえば、朝起きてすぐにタスクに追われたり、仕事中ずっと集中し続けたり、通勤電車の中でも気を張っていたり。

こうした日常の中で、私たちは少しずつ「緊張がデフォルト」になっていきます。

身体には、「習慣としての力み」がしみついていく。それが積み重なると、“力を抜く”という状態がどんな感覚だったのかさえ、分からなくなってしまうのです。


また、身体の緊張には「こころ」が大きく関わっていることもあります。たとえば――


  • 失敗できないと思っている

  • 周囲の目が気になる

  • ちゃんとやらなければと自分を追い込んでいる


こうした思考パターンは、自律神経を通じて筋肉の緊張につながりやすくなります。

つまり、「がんばる」という心の動きが、「力む」という身体のクセを生んでいるとも言えるのです。


特に日本では、“がんばること”が美徳とされやすく、「ちゃんとしている人ほど無意識に緊張してしまう」状況も少なくありません。

緊張している自分にすら気づけないほど、がんばり続ける……それが長い年月をかけて、身体のこわばりや不調の背景になっていくこともあります。

では、この“無意識の力み”をやわらげていくには、どうすればよいのでしょうか?

次は、身体の視点からこの問いに向き合っていきます。


ゆるめるってどういうこと? 〜「安全」だと感じる身体〜


“力を抜く”というのは、単に筋肉の緊張をほどくことではありません。

 実はそれは、「自分はいま安全だ」と感じられるかどうかが深く関わっています。


人の身体は、「危険がある」と感じると無意識に緊張するようにできています。

これは、生きのびるための本能的な防御反応です。

たとえ目に見える危険がなくても、心のどこかで緊張や不安があれば、身体はそれを“警戒状態”として察知し、筋肉や呼吸に反応が現れるのです。


たとえば、プールで浮かぼうとしたときのことを思い出してみてください。

「沈まないように!」と必死に力を入れると、かえって身体が沈んでしまう。でも、ふっと力を抜いて水に身をまかせたとき、自然と浮かび上がってくるあの感覚。

あのときの身体は、「もうがんばらなくても大丈夫」と感じていたはずです。

まさに、“安心できたときに力が抜ける”ということを、私たちはすでに体験しているのかもしれません。



逆に言えば、自分の内側や周囲に「安心」を感じられたとき、初めて身体はゆるみ始めるとも言えます。

これはソマティック心理学でも重要なポイントとされていて、「身体の感覚を丁寧に感じること」が、自律神経の調整や緊張のゆるみに大きく関わるとされています。

たとえば、


  • ゆっくりと深呼吸する

  • 身体の一部に触れて、あたたかさや重さを感じてみる

  • 照明や音、触れているものに「心地よさ」があるかを確かめる


こうした行為が、神経系にとっての「安全サイン」になり、力みを手放すきっかけになることがあります。


つまり、力を抜く=がんばらないことではなく、 “自分がいま安心していいんだ”と身体が納得できること

そんな視点で身体と向き合ってみると、「力を抜く」ことへのハードルが、少しだけ下がるかもしれません。

次は、こうした“安全感”をどう日常で育てていけるのか、実践的なヒントをご紹介します。


がんばらずに「ゆるむ」ためのヒント


“力を抜こう”と意識しても、逆に力が入ってしまうことってありませんか?

実は、力を抜こうと「思えば思うほど」抜けなくなるのは、ごく自然な反応です。

 それは、頭で命令しているうちは、身体が“安心していい”とは思えないから。


そんなときは、考えるより、まず感覚をゆるめる方向へシフトしてみるのがポイントです。

たとえば、次のようなヒントが役立つかもしれません。


  • 深呼吸をしながら、「吐く息」を少しだけ長くしてみる

  • 肩やお腹に手を当てて、あたたかさを感じてみる

  • 「いまどこに力が入っているかな?」と、やさしく観察してみる

  • 好きな音楽や香り、肌ざわりのいい服など、「五感に心地よいもの」を選ぶ


どれも簡単なことのようですが、これらはすべて「いまここにいる自分」を肯定するための“安心の入り口”になります。

無理に変えようとしなくていい。 ただ、少しだけ“いまの自分”に寄り添ってみる。

そうすることで、少しずつ「がんばる=常に緊張する」という思い込みのループがゆるんでいきます。

次は、そうしたループをやさしく解いていく視点―― 整体の現場でよく見られる、“気づき”の瞬間について触れてみたいと思います。


整体で起こる“気づき”という変化


整体の現場では、ときどき印象的な瞬間に立ち会うことがあります。

それは、施術を受けながら「こんなに力が入ってたんだ」と、ご本人が“はじめて自分の緊張に気づく”ような場面です。

身体は、自分が思っている以上に繊細で正直です。

「がんばらなきゃ」「気を張らなきゃ」と思う前に、もうすでに防御反応として力んでいた――そんなこともよくあります。

でも、誰かの手に触れられたり、安心できる空間に身を置いたとき、ふっと力が抜けて、 「気がついたら、息が深くなっていた」 「頭の中が静かになった」 といった変化が訪れることがあるのです。


こうした体験は、単なる“リラックス”にとどまらず、 「自分の身体はこんなふうに緊張していたんだ」と“気づく”プロセスそのもの

気づきが起こると、人は変わり始めます。

がんばることも大切だけれど、ゆるむことも大切。

どちらかを否定するのではなく、どちらも選べるようになる。

整体は、そんな“選べる自分”を取り戻す場でもあるのかもしれません。


おわりに 〜力を抜くという“選択肢”〜


「力を抜くのが難しい」と感じるのは、決して意志が弱いからでも、感覚が鈍いからでもありません。

むしろ、そう感じる方ほど、ふだんから一生懸命で、周囲に気を配りながらがんばっている人なのだと思います。

ただ、がんばり続けることは、身体にとっては“緊張し続けること”でもあります。

だからこそ、たまには身体にこう問いかけてみてほしいのです。

「いま、この瞬間、力を抜いても大丈夫だろうか?」

最初はうまくできなくても、少しずつ“安心できる感覚”を増やしていくことで、 身体はゆっくりと、そして確実に変わっていきます。


整体は、そのプロセスを一緒に歩む場所です。

施術中に見える変化は、筋肉のゆるみだけではありません。

 呼吸の深まりや、表情のやわらぎ、 そして「自分ってこんなふうに緊張してたんだ」という気づき。

それら一つひとつが、「がんばりすぎなくても大丈夫」という身体からのメッセージなのかもしれません。


もし、ふと心や身体に“かたさ”を感じたら、 ほんの少しだけ、立ち止まってみる時間をつくってみてください。

きっとその中に、今のあなたにとって必要なヒントが眠っているはずです。

みどり整体院では、中野区の静かな南口エリアにて、 そうした“気づき”のきっかけになるような整体を行っています。

がんばりすぎず、ゆるめることを大切にしたい方へ。ぜひ一度、身体の声に耳をすませにいらしてください。


※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、特定の症状の改善や治療効果を保証するものではありません。内容は個人の経験や一般的な知見に基づいており、すべての方に当てはまるとは限りません。体調に不安がある場合は、医療機関にご相談ください。


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