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猫背は、身体が守ってる「最後の砦」

  • 執筆者の写真: タナカユウジ
    タナカユウジ
  • 11月15日
  • 読了時間: 6分


冬の朝、肩をすくめて歩くと、背中は自然と丸くなります。

寒さだけではありません。忙しさや不安、人に見られる緊張でも、身体はそっと胸を閉じて自分を守ります。

猫背は、だらしなさの証拠ではなく、「安全を守る姿勢」でもあると私は考えています。

無理に伸ばす前に、その理由を聞いてあげる。そこから、自然に開いていく余地が生まれます。


猫背は、悪者ではありません。多くの場合、防御反応として形作られています。

無理に「直す」よりも、「ほどく」ことが大切です。

安心できる条件を整えると、背中は自然に開きやすくなり、姿勢は長く安定しやすくなります。

日常の動作や環境を少し見直すだけでも、その変化を感じる方が多いです。


整体現場でよくある質問

「猫背は直さないといけないですよね?」と聞かれることがよくあります。私はこうお伝えします。


「そうとも限りません。まず、なぜその形になっているのか身体の声を聞いてみましょう」


ある方の例です。デスクワーク歴が長く、人前で話す機会が増えた頃から背中が丸くなったと感じるとのこと。

施術では胸を無理に開かず、まず背中側のこわばりと首の力みをほどき、座面の高さとモニター位置を少し変えてもらいました。

数週間後、「気づいたら背すじが勝手に伸びている時間が増えた」とお話しされました。力づくで「良い姿勢」に矯正しなくても、身体が守らなくてよい環境がそろうと、自然に変わることがあるのです。


猫背の背景にあるもの

猫背という形は、単なる「姿勢のくせ」ではなく、身体がこれまでに経験してきた出来事の“記録”でもあります。

そこには心理・身体・環境の3つの層が重なっています。


人は不安や緊張を感じると、無意識のうちに胸を閉じて守るようにします。

これは、動物が危険を察知したときに身体を縮めて急所を守る反応と同じで、自然な防御行動です。

過去の緊張や人間関係のストレスが残っていると、身体が“守る形”を記憶したままになることもあります。


また、長時間のデスクワークやスマホ操作によって、腕が前に出たまま固定されると、肩甲骨まわりの筋肉が引っ張られ、背中が丸まりやすくなります。

冷えや疲労が続くと、身体は熱を逃がさないように丸まる方向へ動き、姿勢も縮こまりやすくなります。

さらに、椅子や机の高さが合っていなかったり、モニターが低すぎたりすると、背中が前に落ちる姿勢が習慣化します。

歯の食いしばりや眉間の緊張など、日々の小さな力みも上半身を硬くしていきます。


つまり猫背は、「怠け」や「性格の問題」ではなく、身体がこれまでを生き抜くために取ってきた最適解のひとつ。

そう考えると、無理に正そうとするよりも、「何を守ってきたのか」に目を向けたほうが、自然に整う道筋が見えてきます。


「直す」ではなく「ほどく」の手順

胸を無理に張ると、一時的には伸びたように見えても、反動で疲れや違和感が出やすくなります。

私が現場でよく使うのは、「背面の安心感をつくる」ことから始める方法です。

イスの背もたれや壁に背中を軽く預け、肩甲骨の下あたりにやわらかなクッションを入れる。

うしろが守られている感覚が出ると、胸は自然と開きやすくなると感じる方も多いです。


次に、首まわりの「上に引っ張る力み」をほどきます。

両手で鎖骨の下を撫で下ろすだけでも、緊張がやわらぐことがあります。

目の焦点を遠くに送るだけでも、首が抜けるような感覚を覚える方もいます。


腕の重さを一度、自分の身体のほうへ戻すことも大切です。

長時間の作業で腕が前に固定されると、胸が閉じやすくなります。

肘を体側に軽く寄せ、脇に空気を一口入れるように待つと、胸郭が開きやすくなる場合があります。


骨盤と座面の関係も見逃せません。

座面が高すぎると腰が丸まり、低すぎると骨盤が後ろに倒れます。かかとが床に付き、膝が股関節より少し低いか同じくらいの高さが目安です。

お尻の下に薄いタオルを敷き、坐骨が軽く前に転がる位置を探すのもおすすめです。


最後に、視線と画面の高さ。モニター上辺が目線と同じか少し下にあると、自然と背中が伸びます。

スマホは胸より上で持ち、あごを引きすぎず、のど元の自由を残しましょう。


小さなセルフワーク(1分でできる)

忙しい一日の中でも、1分でできる小さなケアがあります。以下の3つは、特に現場でも取り入れやすいと感じられるものです。


  • 胸骨さすり:胸の中央(みぞおち上〜鎖骨の間)を軽い圧で撫で上げる。胸に呼吸が入りやすく感じる方もいます。

  • 肩甲骨ラインへのタッチ:背中に片手を回し、肩甲骨の内側を指でなぞる。背中側の存在感が戻り、力みがほどけやすいです。

  • 視野の切り替え:近距離作業が続いたら、窓の外など遠くを5秒見る。首の後ろが緩み、頭の位置が自然に整いやすくなります。


現場エピソードから見えたこと

「胸を張ってください」と伝えると、首すじや腰を固めてしまう方が多くいます。

胸郭ではなく「首と腰」で頑張ることで、かえって疲れやすくなるのです。

そこで、「背中側を安心させる」ことを先に行うと、胸を張る指示をしなくても自然に胸が開いていく様子が見られます。

姿勢を「正そう」と意識するよりも、「整いやすい環境をつくる」ことのほうが、ずっと続けやすいのです。


よくある勘違いをやさしく解きほぐす

猫背は性格の問題ではありません。

まじめさや自信のなさと短絡的に結びつける必要はなく、身体の事情を見たほうがずっと建設的です。

また、胸を張ればそれで解決というわけでもありません。

見た目は一瞬で変わりますが、息苦しさや肩のつっぱりを感じる方も多いです。

運動やストレッチだけでなく、生活環境や睡眠、服の硬さなど、暮らし全体が影響していることを忘れないようにしましょう。


暮らしの中の「姿勢が整いやすい工夫」

日常の環境をほんの少し整えるだけでも、姿勢が自然と安定していく感覚を持つ方が多いです。


  • 椅子と机の高さの見直し:膝と股関節が同じ高さか、少し膝が下がる程度が目安。

  • モニターの位置調整:画面の上辺が目線の高さか少し下。

  • スマホの位置:胸の高さより上で持ち、あごを引きすぎない。

  • 冷え対策:室内の冷えすぎに注意し、首・胸元を冷やしすぎない。

  • カバンの持ち方:片側に偏った重さを避け、負担を分散する。


まとめ

猫背は「直す対象」ではなく、身体が守ってきた「最後の砦」。敵にしないで、いったん味方にしてみましょう。

背中側の安心感をつくり、首と腕の小さな力みをほどき、環境を整える。

そうすると、胸は無理をしなくても、少しずつ開いていくと感じる方もいます。形だけを変えるより、理由が変わるほうが、姿勢は長く続きます。


みどり整体院からお伝えしたいこと

当院では、無理に胸を張らせるような矯正は基本的に行いません。

身体が守ってきた背景を尊重しながら、安心感と動きやすさを取り戻すお手伝いをしています。

気になる方は、お気軽にご相談ください。


※ここでの内容は、私自身の経験に基づく一般的な考え方です。全ての方に当てはまるわけではありません。痛みやしびれなどの症状が強い場合は、無理をせず専門機関にご相談ください。せ術の効果を断定する表現は避け、暮らしの工夫が一助になる可能性について述べています。


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