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心と身体のあいだにあるもの 〜認知行動療法から学んだ“気づき”のヒント〜

  • 執筆者の写真: タナカユウジ
    タナカユウジ
  • 6月14日
  • 読了時間: 5分

今回は、私がリハビリ中に整体の勉強と並行して学んできた「認知行動療法(CBT)」について、日常でも活かせるヒントを交えながらお話ししてみたいと思います。


専門カウンセラーではありませんが


まず初めにお伝えしておきたいのは、私は国家資格である臨床心理士や公認心理師ではありませんが、整体の施術理解を深めるために心理カウンセリングの知識を学びました。

心理カウンセラーとして専門的な活動をしているわけではなく、整体の技術の一部として心理的な視点を取り入れています。


整体の施術を深める中で、「身体の緊張には心の影響も大きい」と実感する場面が多くなり、その理解を深めるために心理学やカウンセリングを学び始めました。

今でも私は整体師としての立場から、身体と心の両面を見つめる視点を取り入れています。


プライベートでは相談を受けたこともありますが、みどり整体院では専門的なカウンセリングは行っておらず、あくまで整体の技術と理解を支える一つの要素として、心理的な視点を役立てています。


認知行動療法(CBT)とは?


昔の人は「心=心臓」と考えていたといいます。

たしかに、ドキドキしたり胸が締めつけられるような感じがしたりするのは、頭よりも胸のあたりかもしれません。


現代の神経科学では、「心の働き」は主に脳(特に前頭前皮質や大脳辺縁系)の活動とされていますが、最近では「心は身体全体に宿るもの」と捉える考え方も広がってきています。

ソマティック心理学やトラウマ研究の分野では、身体感覚を含めて“心”を理解する視点が重要視されています。


認知行動療法は、「考え方(認知)」と「行動」のつながりに注目した心理療法です。

具体的には、ネガティブな思考パターンに気づき、それを検討・修正するための対話やワークシートを用いた実践を行います。

たとえば、「自分はダメだ」といった自動思考に対して、「それは本当に事実か? 他の見方はあるか?」といった問いを投げかけながら、より現実的で柔軟な考え方に切り替える練習を行います。


また、行動面では、「やる気が出ないから外に出られない」といった場合に、あえて少しだけ行動してみる「行動活性化」という方法が使われることもあります。

これにより、行動によって気分が改善される好循環を生み出すことが狙いです。


人は無意識のうちに「自動思考」と呼ばれる考えのクセを持っていて、それが気分や行動に大きな影響を与えることがあります。

たとえば、雨が降っている日。「今日は最悪だ…」と考えるか、「この雨音も悪くないな」と感じるかで、同じ状況でも心の中は大きく変わってきます。


最新の研究では、ストレスが継続的にかかると脳の前頭前皮質の働きが弱まり、感情の制御が難しくなることが知られています。

CBTのような手法は、前頭前皮質の働きを回復させる訓練にもなるとされ、うつ病や不安障害の再発予防にも効果的であることが示唆されています。

また、近年では「第三世代の認知行動療法」として、マインドフルネスやACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)といったアプローチが登場し、思考を“変える”だけでなく“受け入れる”方向性も注目されています。


学んで気づいた、自分の“思考のクセ”


この療法を学び始めた頃、私自身も「気づかないうちに自分を苦しめる考え方をしていた」ことに驚かされました。

たとえば、「完璧にやらなきゃ」「失敗は許されない」といった思い込み。

これは知らず知らずのうちに身体を固くして、呼吸を浅くさせていたことにもつながっていました。


最近の心理研究では、「自己批判傾向が強い人ほど、慢性的な筋緊張を起こしやすい」というデータもあり、“思考”が“身体”に与える影響は想像以上に大きいのだと実感します。

思考に気づき、それを少し緩めてあげると、身体の反応も変わってくる――そんな体験を、私は実際に感じています。


日常でできる“認知のケア”


では、整体を受けていない日常でも、自分でできる心のケアにはどんなものがあるでしょうか?

実際に心理学の研究でも、日常的なセルフケアがストレスの軽減や感情調整に役立つことが示されています。

2023年の心理学レビューによれば、次のような“日常的な認知ケア”は効果が高いとされています:


  • 「今、自分はどんな言葉を自分にかけているだろう?」と問いかけてみる

  • 落ち込んだとき、「その考えは本当に100%正しいのか?」と立ち止まってみる

  • 思考に巻き込まれそうになったら、まず深呼吸して、身体の感覚に意識を戻す


こうした実践は、認知行動療法の基本的な視点である“気づき→検討→調整”のサイクルを、自分の中に作っていくことにもなります。


また、最近では「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」という考え方が注目されており、自分に対してやさしく声をかけることが、心理的安定や回復力(レジリエンス)の向上に効果的であるという研究結果も多数報告されています。


さらに、短い日記を書く、散歩をする、自然と触れるといった「軽度の注意の転換」も、思考の硬直を防ぐ効果があるとされています(2022年 神経心理学研究より)。

また、運動も非常に効果的なセルフケアのひとつです。特に有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギングなど)は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの分泌を促し、気分の安定や集中力の向上に役立つことが、多くの研究で示されています。

2020年のレビュー研究では、週3回以上の中強度の運動が、うつ症状の軽減や不安感の調整に有意な効果があることが報告されています。


身体と心は、つながっている


整体という「身体」からのアプローチと、心理という「心」からのアプローチ。

どちらも、実は同じ「自分を整える」ための方法であり、入り口が違うだけなのかもしれません。

たとえば、施術中に呼吸が浅くなっている方に「考え事が多かったりしませんか?」と尋ねると、「まさにそうでした」と答えられることもあります。

身体は、心の状態を映す鏡のようなものです。

みどり整体院では、そんな視点も大切にしながら施術を行っています。

この記事が、どこかで誰かの“気づき”につながれば幸いです。

ご自身を大切にするヒントとして、心の声にもぜひ耳を傾けてみてくださいね。


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