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座りすぎ時代の新習慣 ― 90秒の“マイクロブレイク”で身体をリセット

  • 執筆者の写真: タナカユウジ
    タナカユウジ
  • 6 日前
  • 読了時間: 4分

はじめに


在宅ワークやデスクワークの普及により、私たちの生活はこれまで以上に「座る時間」が長くなっています。

運動習慣がある方でも、長時間の座位が続くことで身体はじわじわと負担を蓄積していきます。

こうした背景から、海外の職業健康分野で注目されているのが、“マイクロブレイク(Microbreak)”です。直訳すると、「短い休憩」や「小休止」という意味になります。micro(マイクロ) = 「とても小さい」「短い」break(ブレイク) = 「休憩」「中断」

1回30秒〜2分程度の短い休憩をこまめに挟み、身体の状態をリセットする習慣は、日常に無理なく取り入れられる新しい健康法として広がりつつあります。


座りすぎがもたらす影響


「座る」こと自体は悪ではありませんが、長時間同じ姿勢でいることが問題です。

下半身の大きな筋肉(太もも・お尻・ふくらはぎ)は活動が止まり、血液やリンパの流れがゆるやかになります。

これは、鍋のスープをかき混ぜずに長時間放置するようなものです。

上の方は冷えて膜が張り、底の方は熱がこもってしまうように、身体の中でも循環が偏り、末端まで十分に栄養や酸素が届かなくなります。

その結果、むくみやだるさが出やすくなり、関節や筋肉の柔軟性も失われやすくなります。また、姿勢保持筋が固定されることで背中や腰が硬くなり、呼吸も浅くなる傾向があります。

複数の研究で、長時間(例として8時間以上など)座る習慣は、運動習慣の有無にかかわらず健康リスクとの関連が報告されています。

研究により基準や程度は異なるため、日常ではこまめに動きを挟む意識が役立ちます[WHO 2020, Ekelund et al. 2016]。


マイクロブレイクという発想


マイクロブレイクとは、「短時間でもいいから、とにかく立ち上がって動く」ことを繰り返す休憩法です。

特別な道具や広いスペースは不要で、職場や自宅で簡単に実践できます。

この習慣はデスクワーカーだけでなく、長距離ドライバーや立ち仕事の人にも推奨されており、有用とする報告があり導入が進んでいます[Luger et al. 2019, Albulescu et al. 2022]。

動作の種類よりも「動く」という事実そのものが重要で、たとえ短時間でも筋肉のスイッチを入れることが全身に良い影響を与える可能性があります。


自宅や職場でできる簡単なマイクロブレイク例


肩甲骨リセット

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両肩を後ろに引き、肩甲骨を寄せながら5秒キープ。その後ゆっくり戻す動作を5回繰り返します。背中上部の緊張を和らげ、胸を開く感覚を得られます。


足首ポンプ

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椅子に座ったまま、かかと上げとつま先上げを交互に20回ずつ行います。ふくらはぎの筋肉を使うことで、めぐりを意識しやすくなります。


立ち上がりスクワット

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椅子から立ち上がり、ゆっくり座る動作を1分間繰り返します。深くしゃがみすぎず、腰や膝に負担をかけない範囲で行うのがポイントです。


これらはどれか1つでも、全部行っても2分以内で済みます。


習慣化するための工夫


短時間でも続けるためには、「忘れない仕組み」と「やるきっかけ」を生活の中に組み込むことが大切です。

例えば、スマホやPCに45分〜1時間ごとのアラームを設定すれば、時間感覚に頼らず動くことができます。

電話やメール送信後、資料印刷の待ち時間など“ちょっとした区切り”を動く合図にする「行動トリガー法」も有効です。

さらに、デスク上に水筒やストレッチグッズ、ちょっとしたバランスボードを置くことで、「目に入ったら動く」仕組みを作れます。

こうした小さな環境づくりが、習慣化を後押しします。


整体とのつながり


座りっぱなしが続くと、股関節や背中の柔軟性が低下し、骨盤や肩の位置バランスにも影響が出やすくなります。

マイクロブレイクはこうした硬さや偏りを防ぐ“予防的習慣”です。

ただし、すでに動きづらさや慢性的な張りを感じる場合は、自己流で無理に動かすよりも、まず整体で可動域や筋膜の滑走性を整えることが安全で効率的です。

施術によって動きやすい土台を作ることで、マイクロブレイクの動作がよりスムーズになり、日常の姿勢維持もラクになります。

また、整体では個々の身体のクセに合わせた動作提案もできるため、「自分に合ったマイクロブレイク」を見つけるサポートにもなります。


おわりに

まずは1日1回からでも構いません。

短時間でも動く意識を持つことで、日々の軽やかさは少しずつ変わります。

ぜひ無理のない範囲で、90秒のマイクロブレイクを取り入れてみてください。

みなさまの健康を応援しております。


※本記事は一般的な情報提供であり、治療や診断を目的としたものではありません。痛みや不調が続く場合は無理をせず、医療機関や専門家にご相談ください。妊娠中や既往歴のある方は、主治医等にご確認のうえ実施してください。

参考文献

  • WHO. Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020.

  • Ekelund U, et al. Lancet. 2016;388(10051):1302-1310.

  • Luger T, et al. Occup Environ Med. 2019;76(5):302-309.

  • Albulescu P, et al. BMC Public Health. 2022;22:343.

  • Duran D, et al. Med Sci Sports Exerc. 2023;55(1):38-46.


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