ポストバイオティクスって何?──腸から“なんとなく不調”をととのえる考え方
- タナカユウジ
- 5月24日
- 読了時間: 6分
「なんとなく身体が重い」「やる気が出ない」「寝ても疲れが取れない気がする」──明確な原因があるわけではないけれど、続く“なんとなく不調”。
そんなとき、病院に行っても「特に異常はありませんね」と言われてしまうこともあるかもしれません。
でも、それで終わらせてしまうのは、少しもったいない気がするのです。
実は最近、こうした“漠然とした不調”の背景に、腸内環境の乱れが関係している可能性があると、注目が集まっています。
身体だけでなく、心や感情にも影響する腸の状態──。今回はその関係と、整体とのつながりについて、わかりやすくお話ししていきます。
腸と“心と身体”の不思議な関係──ポストバイオティクスとは?
腸には「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」、通称「腸内フローラ」と呼ばれる数百兆個の微生物が棲んでいます。
彼らは食べたものを分解したり、身体に有用な物質を作ったりして、私たちの健康を支えています。
中でも最近注目されているのが、ポストバイオティクス(Postbiotics)と呼ばれるもの。これは“プロバイオティクス(菌)”や“プレバイオティクス(菌のエサ)”ではなく、「腸内細菌がつくり出した代謝物質」のことを指します。
簡単に例えると、腸にいる菌たちは、料理人のような存在です。
食べ物を使って、体にとって大切な“スープ”をつくってくれます。
そのスープが「ポストバイオティクス」で、体の中をゆるやかに整えてくれます。
このポストバイオティクスには、
炎症を抑える
腸の粘膜を守る
免疫バランスを整える
といった働きがあり、今後サプリメントや機能性食品の分野でも重要視されると言われています。
また、腸と脳は「迷走神経」という神経でつながっており、腸の状態がそのまま心の状態に影響を与える──これを「腸脳相関」と呼びます。
セロトニン(いわゆる“幸せホルモン”)の9割近くは腸で作られていると言われ、腸の環境が乱れると、気分や意欲、睡眠の質にまで影響することがあるのです。
緊張が腸にあらわれる──お腹が硬くなる理由
不思議なことに、緊張している人のお腹を触ると、“ひんやりしていて、硬い”ことがよくあります。
「なんだか最近、調子が悪い」「疲れている気がするのに、寝てもすっきりしない」そんな方のお腹を優しく触れてみると、まるで身体が“こわばっている”かのように、呼吸が浅く、お腹が固まり、動きが感じられない──そんな状態がみられるのです。
これは、腸の周りの筋肉や膜組織が緊張しているから。
ストレスや不安を感じると、身体は“守る”ためにお腹を固めてしまうのです。
いわば、防御反応としての「腸のこわばり」。
また、緊張によって交感神経が優位になると、消化のための働き(副交感神経)は抑えられてしまいます。
結果として、腸の動きが鈍くなり、張りや便秘、ガスがたまりやすくなることも。
そして、そういった不快感がさらに“気分”に影響し、気持ちが沈んでいく…という、腸と心の悪循環に陥るケースも少なくありません。
整体的には、腸に直接触れなくてもできることがある
腸を「整える」というと、食事や運動の話になりがちですが、整体的には身体の外から腸のまわりを緩めることで、間接的に腸の動きや呼吸の深さに影響を与えることができます。
たとえば──
横隔膜の動きを助ける(呼吸を深くする)
腹直筋や腸腰筋など、腹部前面の筋肉をゆるめる
背中側(腰部〜胸椎)の筋肉を緩め、内臓の可動性を引き出す
骨盤の角度やリズム(仙腸関節)を調整する
こうした働きかけは、整体を受ける中で「お腹があたたかくなってきた」「呼吸が自然に深くなった」といった変化として感じられることもあります。
腸を整える“選択肢”──48時間断食という方法もある
腸の環境を整える方法としては、発酵食品を食べる、規則正しい生活を送る、ストレスを減らす──などが一般的に知られています。
その中で、最近注目されているのが「断食(ファスティング)」による腸内リセットです。
断食で腸を“休ませる”という考え方
食べ物が24時間体制で入ってくる現代の食生活では、腸は常に働き続けています。
そんな中で一度、「休ませて、リセットする」というのが断食の基本的な考え方です。
特に最近では、「48時間断食」というスタイルが注目されています。
これは、食事を48時間抜くことで腸内細菌のバランスを一度リセットし、再び整った状態に“育て直す”土壌をつくる、という考え方です。
実際に何が起きるのか?
断食中、腸では以下のような変化が起きるとされます。
有害菌の活動が抑えられる
善玉菌の代謝物(ポストバイオティクス)が生まれやすくなる
腸の粘膜が修復されやすくなる
代謝の再構築(オートファジー)の活性化
ただし、誰にでも勧められるわけではない
断食には注意点もあります。
持病や低血糖のリスクがある方は避けた方がよい
ストレスが強いとき・体力が落ちているときは不向き
再開する食事(回復食)で逆効果になる場合も
だからこそ、自分に合うかどうかを丁寧に見極める」ことが何より大切です。整体の視点でも、断食によって一時的に身体が冷えたり、筋肉が張りやすくなる人もいるため、そういった反応にも注意が必要です。
整体を受けることで、自律神経や腸のまわりの緊張を緩め、断食をする・しないにかかわらず、腸が働きやすい身体を整えていくことができます。
腸がよろこぶ、やさしいセルフケア
腸はとても繊細な臓器。心や身体の緊張を敏感に感じ取り、その影響を受けやすいと言われています。ここでは、日常生活の中で手軽に取り入れられる、腸のためのセルフケアをご紹介します。
① ゆっくりとした「腹式呼吸」
呼吸が浅くなると、横隔膜の動きが小さくなり、その下にある腸のマッサージ効果も減ってしまいます。「4秒吸って、8秒吐く」リズムで、寝る前に数分間ゆっくり呼吸するだけでも、腸の動きが変わってくることがあります。
② 腹巻き・カイロで「お腹を温める」
冷えたお腹は、腸の動きも停滞しがち。おへその下あたりを温めてあげることで、副交感神経が優位になり、腸が安心して働ける状態が整います。
③ 「の」の字マッサージ
仰向けに寝て、お腹に手を当てて、「の」の字を書くように時計回りにゆっくりさする方法。便の流れを助けたり、ガス溜まりを軽減する助けになります。
④ お風呂+軽いストレッチ
入浴で身体が温まると、自律神経のバランスが整いやすくなります。湯上がりにベッドの上でお腹に手を当てるだけでも、腸がふっと緩む感覚が得られることも。
まとめ
腸の状態を整えることは、身体のためだけでなく、心を整えることにもつながっています。食べもの、呼吸、生活のリズム、そして“触れられる安心感”──自分に合った方法で、腸にやさしく寄り添ってみてください。
緊張やストレスでお腹がこわばっていると感じるときは、外からのケアも選択肢のひとつです。
みどり整体院(中野区)では、身体を「緩める」ことで内臓のはたらきが整いやすい環境をつくる整体を行っています。
腸から整えることで、すこしでも“なんとなく不調”がやわらぐきっかけになれば幸いです。

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