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フレイルとは?老化との違いと筋力低下・運動の最新研究

執筆者の写真: タナカユウジ
タナカユウジ
11 分前
読了時間: 9分


以前は歩いていた近所の店へ、自転車や車で行くことが増えた。

買い物の荷物が重く感じられ、外出した翌日まで疲れが残るようになった。

こうした変化があっても、「もう年だから」と、そのままにしてしまうことがあります。


年齢とともに身体が変わるのは自然なことです。

ただ、疲れやすさや活動量の低下を、すべて年齢だけで説明できるわけではありません。

そこで知っておきたいのが「フレイル」という考え方です。


フレイルは、単に年を取ったことや、筋肉が少なくなったことを指す言葉ではありません。

この記事では老化との違いを整理し、筋力低下を早く捉えようとする研究を紹介しながら、日常のどのような変化に目を向ければよいのかを考えます。



フレイルとは?年を取ることとの違い


フレイルとは、加齢などに伴って身体の予備能力が低下し、病気や生活環境の変化といった負担に対応しにくくなった状態を指します。

予備能力とは、普段の生活をこなすだけでなく、いつもより負担がかかったときに持ちこたえる余力のことです。


たとえば、体調を崩して数日休んだあと、それまでの生活へ戻るのに時間がかかる。

食事量が減ったことをきっかけに、外出や家事まで難しくなる。

このように、一つの出来事が生活全体へ響きやすくなることが、フレイルを理解する手がかりになります。

ただし、こうした経験だけでフレイルと判断することはできません。


老化は、年齢を重ねる中で起こる幅広い変化を表す言葉です。

一方、フレイルでは、年齢そのものよりも、心身の機能や生活を支える余力がどの程度保たれているかを見ます。

同じ年齢でも状態は異なるため、「高齢になった人は全員フレイル」ということではありません。


健康な状態と要介護状態の中間として説明されることもありますが、そこを一方向に進むと決まっているわけでもありません。

状態に合った支援や生活の見直しによって、機能を取り戻せる場合があることも、この考え方の大切な点です。

「年だから仕方がない」で終わらせず、対応できることがあるかを考えるための言葉と捉えると分かりやすいでしょう。



身体のフレイルを考える五つの項目


身体面のフレイルを評価する方法の一つに、J-CHS基準があります。

主に確認するのは、意図しない体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度の低下、身体活動量の低下という五つの項目です。


意図しない体重減少は、減量をしていないのに体重が落ちていることを指します。

筋力については握力などの測定を用い、歩行速度も一定の方法で確認します。「最近弱くなった気がする」という印象だけで評価するわけではありません。


疲労感や活動量についても、一日の疲れだけでなく、普段の状態や生活の変化を確認します。

忙しい日に疲れたことや、雨で外出しなかったことを、そのままフレイルに結びつけるものではありません。


この記事では自己診断用の点数表として使うのではなく、身体の変化を見る視点として紹介しています。

気になる変化が続く場合は、医療機関などで、病気や薬の影響、食事の状態も含めて確認することが大切です。


また、「膝が曲げにくい」「肩が上がりにくい」という動かしにくさと、筋力の低下も同じではありません。

痛み、関節の動く範囲、普段の身体の使い方など、別の要素が関わることがあります。

関節の動きにくさについては、関節が硬くなる原因とは?動かさないリスクとやさしい整え方で詳しく説明しています。



フレイルは筋力だけの問題ではありません


フレイルを考えるときは、身体面だけでなく、気分や意欲といった心理面、人とのつながりや生活環境などの社会面にも目を向けます。

先ほどの五つの項目は身体面を評価する方法であり、それだけで生活上の課題をすべて把握できるわけではありません。


買い物に行くのが負担になると、外出の機会が減るかもしれません。

外出が減れば、知り合いと話したり、一緒に食事をしたりする機会も少なくなることがあります。

逆に、出かける用事や会いたい人がいなくなったことが、生活の活動量に関わる場合もあるでしょう。


こうしたつながりを考えると、「脚の筋肉を鍛えれば解決する」とは言い切れません。

身体を動かしやすい条件だけでなく、食事を用意できているか、外出の手段があるか、困ったときに相談できるかも大切な確認点です。


もちろん、一人暮らしや外出の少ない生活だけでフレイルと決まるわけではありません。

本人が何に困っていて、何を続けたいのかを確かめながら考える必要があります。

家族が気づいた場合も、急に運動を増やすよう勧めるより、買い物や食事など、具体的に負担が増えた場面から話す方が状況を共有しやすいでしょう。



筋力低下を早く捉える研究では、何が分かったのか


日常の変化や身体機能の測定に加えて、客観的な指標を使ってフレイルを捉えようとする研究も進んでいます。


国立長寿医療研究センターが2026年9月18日に公表した研究では、同センターのバイオバンクなどに登録された高齢者168名を対象に、フレイルの判別に役立つ指標の候補を検討しました。

内訳はフレイル82名、プレフレイル25名、健常高齢者61名です。


注目されたのは、SMI(四肢骨格筋量指数)と、血液中で測定するアペリン、GDF15です。

SMIは腕や脚の骨格筋量を身長に応じて評価する指標で、血液検査の値ではありません。

アペリンとGDF15は、身体の状態との関連が調べられている物質です。


研究では、これらが現在のフレイルを判別するための候補となることを再検証しました。

また、健常高齢者の追跡データから、将来の筋力低下のリスク評価に活用できる可能性も示されました。


ただし、「血液検査で将来フレイルになるか分かる」と証明されたわけではありません。

将来の筋力低下を調べた結果と、フレイル全体の予測は区別する必要があります。

対象者数や追跡データが限られており、より大規模な研究で確かめる必要があるとされています。


現時点では、普段の生活や身体機能の確認を置き換えるものとしてではなく、それらを補う方法が研究されていると受け止めるのが適切です。

この研究は、整体の施術による効果を調べたものでもありません。



日常では「以前と何が変わったか」を見る


研究が進む一方で、日常では専門的な検査値を知らなくても確認できることがあります。

それは、他人と比べた能力ではなく、自分の以前の生活との違いです。


いつもの買い物で休む回数が増えたのか、椅子から立つときに手を使うことが増えたのか。

食事を残す日や、外出を取りやめる日が続いていないか。

単に「元気がない」とまとめず、どの場面が変わったのかを見ると、相談するときにも伝えやすくなります。


毎日細かく採点する必要はありません。

変化があれば、いつ頃から、どのような場面で感じるのかを簡単に記録する程度で十分です。

調子の悪い日だけを切り取らず、生活の流れの中で確認しましょう。


身体の感覚を確かめる方法については、身体の声を聴く方法|違和感に早く気づくための身体感覚の育て方でも紹介しています。

ただし、自分の感覚だけでは分からない変化もあるため、気づくことと専門的な評価は分けて考えます。



身体を動かすこと、食べること、人と関わること


生活を見直す際は、運動だけに課題を絞らないことが大切です。

食事が十分に取れているか、身体を動かす機会があるか、人と関わる場面が保たれているかを、今の状態に合わせて考えます。


運動についても、どのような方法がフレイルと関係するのか研究が進んでいます。

2026年10月に『Frontiers in Public Health』で発表されたシステマティックレビュー/メタ解析(複数の研究結果を集めて検討する研究)では、60歳以上を対象としたランダム化比較試験をもとに、レジスタンス運動、ウォーキング、太極拳とフレイルとの関係が検討されました。


その結果、レジスタンス運動を行った研究では、全体としてフレイルの評価値が低くなる方向の結果が示されました。

一方、ウォーキングや太極拳については、今回の解析では統計学的に明確な結果は確認されませんでした。


ただし、これは「筋力トレーニングが最も優れている」という意味ではありません。

運動の種類を直接比較した研究ではなく、研究数や対象者、運動内容などにも違いがあります。

現時点では「この運動を、この回数行えばよい」と一つの方法に決めるのではなく、身体の状態や体力に合わせて運動を考えることが大切でしょう。


身体を動かすきっかけとして、日常の動作に目を向ける方法もあります。

忙しくて運動できない方へ|日常動作で身体を整える続けやすい習慣では、立つ、座る、歩くといった動作を生活の中で見直す視点を紹介しています。

ただし、日常動作を意識するだけで、必要な筋力トレーニングや運動量をすべて補えるという意味ではありません。


すでに歩行が不安定だったり、動くと痛みや強い疲れが出たりする場合は、自己判断で負荷を増やさず、身体の状態に合った方法を相談しましょう。

食事も、特定の食品だけを増やすのではなく、食欲、食べる量、噛みにくさなど、実際に困っている点から確認することが大切です。


みどり整体院では、日常の姿勢や動き、身体の使い方を一緒に確認することを大切にしています。

一方、フレイルの診断や、体重減少・筋力低下の原因を調べる検査は行いません。

医療機関での評価が必要な変化と、日常の身体の使い方を見直すことを区別して対応します。



「年齢のせい」と決める前に、変化を確かめる


フレイルという言葉を知る意味は、自分や家族に「衰えた」という札を付けることではありません。

年齢だけでは分からない身体や生活の変化を、具体的に確かめるためにあります。


以前より何が難しくなったのか、生活のどこに負担があるのかが分かれば、相談する内容も明確になります。

筋力だけに目を向けず、食事や活動、人との関わりまで含めて見直すことが、これからの生活を考える出発点になります。


※この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や個別の治療方針を示すものではありません。意図しない体重減少や疲労、歩行の変化などが続く場合は、かかりつけ医などへご相談ください。急な脱力や、突然歩けなくなった場合は、年齢やフレイルの問題と自己判断せず、速やかに医療機関へ相談してください。



参考研究・資料


・一般社団法人日本老年医学会

「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」(2014年)



・Akiko Yamakawa, Tohru Hosoyama, Marie Takemura, Shumpei Niida, Kouichi Ozaki, Shosuke Satake, Daichi Shigemizu

“Validation and refinement of a biomarker panel for frailty assessment and prediction of muscle weakness in older adults.”

npj Aging(2026年)


本記事では、以下の国立長寿医療研究センターによる公式研究発表を参照しています。


「フレイル診断と将来の筋力低下予測に有用なバイオマーカー候補を再検証 ―SMI・アペリン・GDF15に着目―」



・Frontiers in Public Health(2026年)

“Effects of different exercise interventions on frailty in older adults: a systematic review and meta-analysis”

2026年10月2日公開




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