不安との付き合い方──防御本能としての不安と、整えるという視点
- タナカユウジ
- 5月21日
- 読了時間: 4分
はじめに
「なんとなく不安」「理由はないけど落ち着かない」──そんな感覚に心や身体が支配されることはありませんか?
現代社会では、情報が多すぎることや、未来への予測不可能性が高まることで、不安を抱えやすい状況が続いています。
けれど不安という感情は、ただの“厄介者”ではありません。実は私たちが生き延びるために備わった、大切なセンサーでもあるのです。
不安は「自分で作り出している」もの?
不安の多くは、「まだ起きていない未来」に対する想像から生まれます。
心理学の研究では、「私たちの不安の85%以上は、実際には起こらない」と言われています(※ペンシルバニア大学の研究など)。
これは裏を返せば、「自分の想像(思考のクセ)」によって不安をふくらませてしまっている、ということでもあります。
もちろん不安には“予防”という役割もありますが、思考と身体が常に緊張状態にあると、慢性的なストレスや疲労につながってしまいます。
また、現代ではこの「不安を刺激する情報」があふれています。
「このままだと危険」「今すぐ〇〇しないと損をする」といった広告や勧誘には注意が必要です。
不安を煽られると、冷静な判断が難しくなります。
そんなときは一度、深呼吸をして、 「これは本当に“いまの自分”に必要な情報か?」と立ち止まってみることも、自分を守るひとつの方法です。
不安は、生き残るための“センサー”だった
不安は、もともと「危険を察知し、身を守るための本能的な反応」でした。
原始時代、人間は常に命の危険にさらされていました。
サバンナを歩いていて、茂みがガサッと動いたとき、「もしかしてライオンかも」と不安を感じることは、生き延びるために重要な反応だったのです。
つまり、不安は“悪者”ではなく、私たちを守るための“防御本能”として働いていたのです。
最新の心理学と脳科学から見る「不安」
現代の脳科学では、不安は「扁桃体(へんとうたい)」という脳の部位が強く関与していることがわかっています。
この扁桃体が過剰に反応すると、脳全体が「危険だ!」と判断し、交感神経が優位になり、心拍数が上がったり、呼吸が浅くなったり、筋肉がこわばったりします。
例えば、夜道で物音がして「何かいる?」と感じて一気に緊張するような反応も、扁桃体が関与しています。
しかし、その後「風の音だった」と気づいて安心する──この“安心”の判断をしてくれるのが、前頭前野(ぜんとうぜんや)です。
前頭前野は状況を冷静に分析し、「これは本当に危険なのか?」とブレーキをかけてくれる役割を果たします。
わかりやすくたとえるなら、扁桃体は「警報機」、前頭前野は「警備員」のようなもの。
警報が鳴ったあとに「それは誤作動だよ」と冷静に止めてくれるのが前頭前野の役目です。
不安を感じること自体は自然なこと。
ただ、必要以上に反応し続けると、心身のバランスが崩れてしまいます。
また、不安というストレスが身体に与える影響は多岐にわたります。
とくに影響が出やすいのが、肩や首まわりの筋肉、胃腸の働き、自律神経のバランスです。
「不安で胃が痛い」「肩に力が入る」「眠れない」といった反応は、不安が身体にあらわれたサインかもしれません。
不安を整える3つのアプローチ
では、どうすれば不安と上手に付き合えるのでしょうか?
ポイントは「なくす」のではなく「整える」こと。
私にももちろん不安はあります。
以下の3つは、そんな時に実践している方法です。
呼吸を整える: ゆっくり吐く呼吸を意識すると、自律神経が整いやすくなります。 「吸う」よりも「吐く」時間を長めにするのがポイント。
身体を感じて動かす: 肩をまわしたり、首をほぐしたり。軽く身体を動かすことで、交感神経の過剰反応が緩みます。 不安で固まりがちな身体に「いまここ」を取り戻しましょう。
言葉にする: 不安を“感じてはいけない”と押し込めるのではなく、素直に書き出してみたり、人に話してみることも効果的です。 「あ、不安なんだな」と自分で認めてあげるだけでも、心は少し落ち着きます。
おわりに──「感じている不安」と仲良くなる

不安は、完全になくすことはできません。 でも、それでいいのです。
むしろ、不安があるからこそ、私たちは慎重になったり、誰かを気づかったり、自分を見つめ直したりすることができるのです。
身体がこわばると、不安もこわばります。 その逆もまた然り。
だからこそ、不安を“整える”ことは、身体と心を整えることにつながります。
今日も、深く息を吐いて。 自分の身体の声に、少し耳を傾けてみてください。
(※本記事は一般的な心理学的知見に基づいた内容であり、医療行為を目的としたものではありません)
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