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仙腸関節は、どこにある?──“真ん中”を見失っていませんか?

  • 執筆者の写真: タナカユウジ
    タナカユウジ
  • 5月26日
  • 読了時間: 6分



身体の“真ん中”とは、どこでしょうか?

 多くの方が「へそ」や「背骨」を思い浮かべるかもしれません。

けれど、その少し奥深くに、あまり知られていない関節があります。

──それが「仙腸関節」です。



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仙腸関節は、骨盤を構成する腸骨と仙骨のつなぎ目にある関節です。

これは、身体を機能的に支える“真ん中”としての役割も果たしています。

解剖学的には「不動関節」とされていますが、実は数ミリ単位のわずかな動き(“ゆらぎ”)があることも、近年の画像解析などで明らかになってきました。


この関節、動きは非常に小さいものの、身体の重さを受け止め、分散し、支える役割を担っています。

つまり、仙腸関節は身体の「支点」として、日常のあらゆる動作に関与しているとも言えるのです。


私たちは日々、立つ・歩く・座るといった基本的な動作を何気なく行っています。

でもそのすべてに、“土台”である骨盤、そして仙腸関節が関係しているとしたら──。

仙腸関節は目立たず、普段あまり意識されることのない場所です。

しかし、それがゆえに、私たちは“真ん中”の感覚を見失ってしまうこともあるのかもしれません。


なぜ“動かない”はずの関節が注目されるのか?


「仙腸関節障害」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。

これは、腰や骨盤周辺の不調に関わる可能性があるとされる概念です。

実際、腰痛の約15〜30%が仙腸関節に関連している可能性があるという報告もあります。

ただし、レントゲンやMRIなどで明確な異常が見つかることは少なく、診断は“除外診断”──他の原因を除いたうえで、消去法的に導かれるケースが一般的です。


整形外科では、仙腸関節に局所麻酔を打ち、一時的に痛みが消えるかどうかで原因を探る「ブロック注射」が診断に使われることもあります。

こうした背景から、仙腸関節は「見えづらい」「わかりづらい」存在とも言えます。

一方、理学療法やボディワークの分野では、仙腸関節を「安定と可動のバランス」という観点から捉える考え方が広がっています。

骨盤が傾くと、その上に乗る背骨もバランスを崩し、全身の動きに影響する──そうした“つながり”の視点です。


仙腸関節を知ることは、「痛みの原因を特定する」というより、「身体の全体性に目を向ける」ことにつながるのかもしれません。


“真ん中”がかたくなると、何が起きる?


仙腸関節がかたくなる、動きづらくなる──その影響は意外と身近なところに現れます。

たとえば、こんな経験はありませんか?


・片足で立つとグラグラする

・歩いていると片側の足だけ疲れやすい

・長時間座っていると、腰やお尻が重だるくなる


こうした違和感の背景には、“身体の支点”である仙腸関節まわりのこわばりや、バランスの崩れが潜んでいるかもしれません。


仙腸関節は、例えるなら「てこの支点」のようなものです。

 支点がほんの少しズレるだけで、力の伝わり方はガラリと変わってしまいます。

たとえば、シーソーの真ん中がずれていたら、どちらかに極端に傾いてしまって、うまくバランスは取れませんよね。


それと同じで、仙腸関節がかたくなると、筋肉や関節が本来の役割を果たしづらくなり、結果として他の場所ががんばりすぎてしまうのです。

身体の中心部が整うと、動きも呼吸も、すこしだけ自然になります。

そんな“支点を感じる力”こそが、全身の調和につながるのかもしれません。


“ゆらぎ”を感じるセルフケア──整えるのは「支点」と「感覚」


仙腸関節まわりを整えるといっても、強く押したり、無理に動かしたりする必要はありません。

むしろ、「感じる」「ゆらす」「ゆるめる」といった微細なアプローチが大切です。

みどり整体院でも実践している、身体の“真ん中”をやさしく感じるための簡単なセルフケアをご紹介します。


① 仰向けで膝を左右にゆらす

  • 仰向けに寝て、両膝を立てます。

  • 両膝をそろえて、呼吸に合わせながら左右に小さく倒していきます。

  • 腰やお尻に“引っかかり”を感じる場合は、倒す角度を浅めにして。


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    ポイント:「力を抜いてゆらす」ことが目的。動かそうとしないこと。


② 骨盤に手を当てて深呼吸

  • 仰向けのまま、おへその横あたりに両手を添えます。

  • 鼻から息を吸い、吐くときに骨盤がじんわり沈む感覚に意識を向けてみてください。


    ポイント:息を吐くときの「ゆるみ感」を観察することが鍵す。


③ ゆったりした骨盤ゆらし(座位または立位)


  • 椅子に浅く腰掛け、坐骨を感じながら左右にやさしく揺れてみましょう。

  • 無理に揺らさず、身体が「ここちよい」と感じる範囲で


これらのセルフケアは、“整える”というより「中心に意識を戻す練習」です。

習慣にすることで、だんだんと“支点のゆらぎ”が感じやすくなってくるかもしれません。


“真ん中”とつながることで、心もゆるむ


仙腸関節まわりには、自律神経や筋膜、さらには内臓とも関わる繊細なネットワークがあります。

日々のストレスや緊張が続くと、知らず知らずのうちに身体の“中心”がこわばってくることも。

これは、感情と姿勢、呼吸の関係が複雑に絡み合っているためです。


特に、呼吸が浅くなっているときや、気づくとお尻や腰に力が入っているとき── もしかしたら、心が「守ろうとしている」状態なのかもしれません。

身体の真ん中が緊張しているとき、私たちは外からの刺激に過敏になりやすく、 自分のペースや感覚を見失いやすくなります。

そんなときこそ、仙腸関節まわりの“ゆらぎ”や“感覚”にそっと意識を向けてみる。 ただそれだけで、心に少しだけ余白が生まれることもあります。


整体やセルフケアは、ただ不調を整えるだけではなく、 “心と身体をつなぎ直す”ような時間でもあります。

“真ん中”とつながることで、私たちは本来の感覚やペースを取り戻していけるのかもしれません。


まとめ──整えるとは、“感じる”ことから始まる


仙腸関節は、目立たない関節かもしれません。 でもその“ゆらぎ”に耳を傾けてみると、


  • 自分の真ん中がどこにあるか

  • 身体がどんなふうに支えられているか

  • がんばらずに整えるという感覚


そうした、普段は見過ごしていた「身体との対話」がはじまります。

身体は、治す対象ではなく、感じる存在

「整える」とは、その感覚を取り戻すプロセスなのかもしれません。


ぜひ、今日の終わりにひと呼吸。 仙腸関節のあたりに手を添えて、そっと感じてみてください。

それが、整うきっかけになるかもしれません。



※本記事は、一般的な健康情報や身体への理解を深めることを目的としており、特定の症状や病気の診断・治療を目的としたものではありません。身体の不調が気になる場合は、医療機関などの専門家にご相談ください。

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