力を抜くのが難しいのはなぜ?身体が緊張し続ける理由と整え方
- タナカユウジ

- 2025年6月12日
- 読了時間: 8分
更新日:9 分前
「もっと力を抜いてくださいね」
そう言われて、力を抜こうとしたはずなのに、なぜか余計に身体が固くなってしまう。
整体の施術中にも、こうしたことはよくあります。
肩を下げようとして首まで力んだり、腕の力を抜こうとして手を強く握ってしまったり。「力を抜こう」と考えれば考えるほど、どこか別の場所に力が入ってしまうこともあります。
これは、リラックスするのが下手だからとは限りません。
そもそも力を抜くという動きは、「力を入れる」のように意識して実行しやすいものではないからです。
今回は、なぜ力を抜こうとすると逆に身体が緊張することがあるのか。そして、頑張って脱力するのではなく、身体が自然に緩みやすくなるためには何が必要なのかを考えていきます。
なぜ「力を抜いて」と言われても抜けないのか
たとえば、腕に力を入れてくださいと言われれば、多くの人はすぐにできます。
拳を握る、肘を曲げる、肩を上げる。
このように筋肉を働かせる動きは、自分の意思で比較的分かりやすく行えます。
ところが、「何もしないで力を抜いてください」と言われると、急に難しくなります。
自分では力を抜いたつもりでも、
「まだ肩が上がっていますよ」
「腕を預けて大丈夫ですよ」
と言われて、初めて力が残っていたことに気づく方もいます。
ここで大切なのは、力を抜くことを「もう一つの動作」にしないことです。
力を抜かなければ。
ちゃんとリラックスしなければ。
うまく脱力できているだろうか。
そう考え始めると、自分の身体を細かく確認しようとします。
すると「力を抜く」という行為そのものが新しい課題になり、身体はまた何かを頑張ろうとします。
これが、「抜こうとしているのに、逆に力が入る」という状態の一つの背景です。
力が入っていることに気づいていない場合もある
もう一つ大きいのが、普段から続いている緊張です。
パソコンを使っているときに肩を少し上げている。
スマートフォンを見ながら首や顎を固めている。
人と話しているときに無意識にお腹へ力を入れている。
何かに集中すると息を止めている。
こうした反応が毎日のように続いていると、その状態が本人にとっての「普通」になっていきます。
つまり、力を抜けないというより、そもそも「今、力が入っている」という感覚が分かりにくくなっていることがあります。
身体の小さな変化に気づくという考え方については、
でも詳しく紹介しています。
力を抜くための最初の一歩は、すぐに身体を変えることではありません。
「ここに力が入っていたんだ」
と気づくことから始まります。
身体の緊張には「守る」という役割もある
そもそも身体が緊張すること自体は、悪い反応ではありません。
転びそうになれば身体を固めますし、突然大きな音がすれば肩が上がることがあります。
不安を感じたり、失敗できない場面に立ったりしたときにも、身体は無意識に身構えます。
これは、状況に対応するための自然な反応です。
問題になるのは、緊張することそのものではなく、必要がなくなっても身体がその状態から戻りにくくなっている場合です。
仕事が終わって家へ帰っても肩が上がっている。
布団に入っても顎やお腹に力が残っている。
休んでいるのに頭の中では次の予定を考え続けている。
こうなると、本人は休んでいるつもりでも、身体はまだ活動を続けているような状態になります。
身体のこわばりを単なる「悪い癖」ではなく、身体を守る反応として考える視点については、
でも紹介しています。
「どうして自分は力を抜けないんだろう」と責めるより、「何に対して身体が身構えているのだろう」と考えた方が、今の状態を理解しやすい場合があります。
力を抜くには「安全だ」と感じられる条件が必要
身体は、周囲の状況によって反応を変えています。
急かされている場所と、落ち着いて過ごせる場所。
知らない人ばかりの場所と、安心できる人と一緒にいる場所。
寒くて落ち着かない部屋と、心地よく過ごせる部屋。
同じ人でも、環境が変われば身体の緊張は変わります。
そのため、力を抜くときに大切なのは「脱力する技術」だけではありません。
身体が緩んでも大丈夫だと感じられる条件をつくることです。
たとえば、椅子やベッドへ身体を預ける。
足裏が床についている感覚を確認する。
少し静かな場所へ移動する。
急いで呼吸を変えようとせず、まず普通に息を吐いてみる。
こうした小さな条件の変化によって、それまで入っていた力が自然に抜けることがあります。
つまり、
「力を抜くから安心する」
だけではなく、
「安心できるから、結果として力が抜ける」
という順番もあるということです。
「ちゃんとリラックスしよう」が新しい緊張になる
真面目な方ほど、ここでも頑張ってしまうことがあります。
「肩の力を抜かなければ」
「深く呼吸しなければ」
「姿勢を正しくしなければ」
「リラックスしなければ」
健康のために始めたことなのに、いつの間にか新しい課題が増えている。
これでは、身体を休ませるはずの時間まで「うまくできているか」を評価する時間になってしまいます。
特に呼吸は分かりやすい例です。
深呼吸をしようとして胸いっぱいに空気を吸い込み、かえって肩や首へ力が入る方もいます。
そんなときは、無理に大きく吸う必要はありません。
まず、今ある息を自然に吐いてみる。
そのあと身体が必要とする分だけ、次の息が入ってくるのを待つ。
それくらいでも十分です。
大切なのは、「正しくできたか」ではなく、その前後で自分の身体がどう変わったかを見ることです。
力を抜く前に「今どうなっているか」を見る
では、日常ではどうすればいいのでしょうか。
おすすめしたいのは、いきなり脱力しようとせず、現在の状態を確認することです。
たとえばパソコンやスマートフォンを使っている途中で、一度だけ身体を見てみます。
肩は上がっていないか。
奥歯は触れていないか。
手を必要以上に強く握っていないか。
お腹を固めていないか。
呼吸を止めていないか。
ここで「力を抜かなければ」と考える必要はありません。
気づいたあとに、一度姿勢を変えてみる。
立ち上がってみる。
手を開いてみる。
息をゆっくり吐いてみる。
それで身体がどう変わるのかを確認します。
自分の身体を採点するのではなく、観察する。
この違いは小さく見えますが、「ちゃんと脱力しなければ」という新しい緊張をつくらないためには大切です。
整体で「抜いていたつもり」に気づくことがある
整体の施術中にも、
「自分では力を抜いていたつもりでした」
と言われることがあります。
たとえば、こちらが腕を動かそうとしたとき、本人も無意識に一緒に腕を動かしていることがあります。
そこで、
「こちらで動かすので、そのまま預けて大丈夫ですよ」
とお伝えすると、最初はどうしていいか分からない。
ところが何度か動かしているうちに、ふっと腕の重さを預けられる瞬間があります。
そのとき初めて、
「今まで自分で支えていたんですね」
と気づく。
これは、整体によって無理に力を抜かせたというより、自分がどこで頑張っていたのかを本人が感じられたということだと思います。
力を抜くことを覚える前に、「自分はここで力を使っていたのか」と分かる。
そこから身体との付き合い方が少し変わることがあります。
力を抜くことをゴールにしなくてもいい
身体には、力が必要なときがあります。
仕事をするとき、運動するとき、何かに集中するとき。
緊張すること自体をなくす必要はありません。
大切なのは、必要なときには力を使い、必要がなくなったら戻れることです。
ずっと脱力している身体を目指すのではなく、緊張と休息を行き来できること。
そのためには、「もっと力を抜かなければ」と頑張るより、
「今はどこに力が入っているだろう」
と、ときどき身体へ注意を戻す方が役立つことがあります。
みどり整体院でも、身体を一方的に緩めることだけを目的にはしていません。
施術を受けながら、自分がどこで支えているのか、どこで息を止めているのか、どんなときに身体を預けられるのか。
そうした反応を一緒に確認することも大切にしています。
まとめ
力を抜こうとすると逆に力が入るのは、珍しいことではありません。
「力を抜く」ということまで課題にしてしまえば、身体はまた頑張ろうとします。
また、普段から緊張が続いていると、自分では力が入っていること自体に気づいていない場合もあります。
だからこそ、最初から上手に脱力しようとする必要はありません。
まずは、
「肩が上がっていた」
「手を握っていた」
「息を止めていた」
と、今の状態に気づくこと。
そして、姿勢や呼吸、環境を少し変えたときに身体がどう反応するのかを見てみること。
力を抜くことは、身体へ「緩め」と命令することではありません。
身体がもう頑張らなくてもよい条件をつくり、その結果として緊張が変わるのを待つ。
そのくらいの付き合い方の方が、かえって身体を急かさずに済むのではないでしょうか。
※本記事は、身体の緊張や身体感覚について一般的な考え方を紹介したものです。
特定の症状の診断や治療、改善を目的としたものではありません。強い痛みや不調が続く場合は、必要に応じて医療機関へご相談ください。
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