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医療と整体の歴史シリーズ 第1回:癒しの原点をさかのぼる〜祈りと呪術から始まった医療〜

執筆者の写真: タナカユウジ
タナカユウジ
2025年7月26日
読了時間: 5分

更新日:10月13日


※動画は記事公開当時の内容です。現在の内容に合わせ、本文は一部更新しています。

整体について調べると、「整体は医療なの?」「治すとはどういうこと?」という疑問に行き当たることがあります。


現在の日本での役割の違いは、「整体は医療じゃない?違いと役割をわかりやすく解説」で整理しています。

また、「治す」という言葉については、「整体って治すの?という疑問から考える身体との向き合い方」でも考えました。


このシリーズでは少し視点を広げ、人々が病や身体をどう捉えてきたのかをたどります。

現在の整体が古代の医療からそのまま続いている、という意味ではありません。

さまざまな時代に見られる「苦しむ人にどう向き合うか」という問いを手がかりに、整体の立場を考えてみたいと思います。


第1回は、祈りや儀式と医療が重なっていた時代から始めます。


祈りと呪術から始まった「医療」


古代の人々は、病の理由を一つの方法だけで説明していたわけではありません。

神や霊との関係から理解することもあれば、目の前の傷や症状を観察し、植物や手技を用いて対応することもありました。


古代メソポタミアでは、病に祈りや儀式で向き合う営みと、症状を観察する営みが見られます。古代エジプトの記録にも、祈りや呪文とともに、けがや病への具体的な処置が残されています。

「昔は呪術だけ、後に医療が生まれた」と一本の線で分けることはできません。


地域や時代によって、病の説明も対処の仕方も異なります。

儀式や歌などが共同体の中で行われた例もありますが、それをアジアやアフリカの人々に共通する一つの医療観としてまとめることはできません。


現代の知識から見れば、効果が認められない方法や、害を及ぼしかねない方法もありました。

一方で、苦しむ人を放っておかず、その時代にできることを試みてきた歴史も見えてきます。


日本の縄文時代の遺骨には、人為的に歯を抜いた痕跡があります。

ただし、それを病の治療の証拠と決めることはできません。

儀礼との関係も論じられており、何を目的としていたかは慎重に考える必要があります。


「手を当てる」という原初の行為


誰かがつらそうにしているとき、背中にそっと手を添える。

そんな行為は、今の暮らしにもあります。


過去の医療や養生にも、身体に触れる方法は見られます。

ただし、古代に行われた「触れること」を、現在の整体と同じ技術や目的だったと考えることはできません。


触れ方や相手との関係によって、触れられる経験は安心にも不快にもなります。

「触れればオキシトシンが分泌され、免疫や消化器系の働きが整う」といった効果まで、一律に言い切ることは避けたいところです。


カイロプラクティックという名称には、ギリシャ語で「手」を意味する語が含まれます。

ただし、この名称が古代から現在まで同じ手技が続いてきた証拠になるわけではありません。


時代ごとに方法や意味は違っても、人が人に触れながら関わってきたことは、医療や暮らしの歴史を考える一つの手がかりになります。


科学が生まれる以前の「治す」


祈りや儀式とは別に、観察や経験を通して病を説明しようとする考え方も育っていきました。


古代ギリシャのヒポクラテスに結びつけられる医学では、病を自然の中で捉え、経過を観察する姿勢が重視されました。

一方、後に長く影響力を持った四体液説を、現在の医学で身体の仕組みを説明する理論として使うことはできません。


インドでは、生活習慣や食事、身体の状態に目を向けるアーユルヴェーダの考え方が発展しました。

中国では、『黄帝内経』などを通じ、陰陽や気といった概念を用いる医学の理論がまとめられていきます。

『黄帝内経』は長い時間をかけて編まれた文献と考えられるため、一つの年に成立したとは言い切れません。


これらは、それぞれ異なる土地と時代に生まれた思想です。

「身体の一部分だけでなく、暮らしや周囲の環境にも目を向ける」という視点には、今の私たちにも考えるきっかけがあります。

ただし、古代の理論がそのまま現代医学で裏づけられたわけではありません。


中国の医学的な身体観がどう整理され、周辺地域へ伝わっていったかは、「医療と整体の歴史シリーズ 第3回:古代東洋医学の体系化と広がり 〜中国・朝鮮・日本、そして同時代の西洋との対比〜」で詳しく取り上げます。


整体はどこから始まるのか?


今回たどったのは、整体そのものの起源ではなく、人々が病や苦しみにどう向き合ってきたかという歴史の一部です。


祈り、観察、薬草、手を添えること。時代や地域によって方法はさまざまで、どれか一つが順番に次の方法へ置き換わったわけではありません。


現在の日本の整体は、病気やけがを診断・治療する医療とは役割が異なります。

そのうえで、目の前の人の話を聞き、身体の使い方や日々の過ごし方にも目を向ける。

歴史を知ることは、そうした現在の向き合い方を考える手がかりになります。


次回予告


第2回は、古代エジプト・インド・ギリシャなどの身体観を見ていきます。


参考・引用資料(抜粋)

  • 小田晋監修『医学の歴史』中公新書、2005年

  • 石川純一『医療人類学入門』医学書院、2013年

  • 中島孝『日本医療の歴史』吉川弘文館、2016年

  • World Health Organization (WHO). Traditional Medicine Strategy 2014–2023

  • 『黄帝内経』日本語訳(東洋学術出版社)

  • Hippocrates. The Corpus Hippocraticum, translated selections

  • 林真一郎『植物と人間の文化誌』八坂書房、2012年

  • 厚生労働省「統合医療(いわゆる『補完代替医療』)に係る情報発信等推進事業」



※本記事は医療的な効果を保証するものではなく、あくまで歴史的・文化的視点から整体の位置づけを考察する目的で執筆しています。また、紹介する概念や理論は現代医学の代替を意図するものではありません。厚生労働省のガイドライン等を遵守し、断定的な表現は避けております。



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